民法択一 物権 物的担保 物的担保概観


・民法に定める担保物件である典型担保物権は、約定担保物権と法定担保物権とに分類できる。
典型担保物権
約定(やくじょう)担保物権(=信用授受の媒介として目的物所有者と債権者との間の設定契約により成立)=質権・抵当権
法定担保物権(=一定の要件がそろえば法律上当然に成立する)=留置権・先取特権
譲渡担保権は約定担保物権であるが、民法に定める典型担保物権ではなく、慣習上の担保物権である非典型担保物権に含まれる。

・随伴性=被担保債権が譲渡されれば、担保物権も債権譲受人に移転すること

・随伴性は典型担保物件一般に認められる性質である。しかし、留置権は、占有の喪失により効力を失うため(302条本文)、被担保債権と共に目的物の占有も移転するのでなければ、留置権は消滅する!!→被担保債権が譲渡されても、留置権は当然には移転しない!

・留置権者は、債権の全部の弁済を受けるまでは、留置物の全部についてその権利を行使することができる(296条)=留置権の不可分性

・296条は質権について準用されている(350条)!=質権の不可分性

・債務者は相当の担保を供して、留置権の消滅を請求することができる(301条)!!!

・質権(350条・304条)及び抵当権(372条・304条)には物上代位性が認められている!!⇔留置権には物上代位性は認められていない!!

・優先的弁済的効力は、先取特権、質権、抵当権には認められているが、留置権については認められておらず、留置権者は事実上優先弁済を受けうるにとどまる!!

+留置権の事実上の優先弁済とは何か?
民297条1項、「留置権者は、その物を従前通り使用し、そこから得られた利益を被担保債権に充当することが出来る」とあります。(ただし、以前からの使用状態を継続できるだけであり、新たに勝手な利用を始めたり、他人に賃借したり出来ません。(民298条1項)。)この点で優先弁済権があるといえます。

目的物が動産であるときは、目的物所有者に対する他の債権者は、事実上、留置権の目的物を差し押さえることが出来ません。
民事執行法124条、他者が占有している動産については、占有者が目的物を執行官に提出することを拒む限り差し押さえすることが出来ないとされ、民事執行法190条で、結局、他の債権者は、被担保債権を弁済してからでないと、事実上、差し押さえが出来ないとされています。ヘー

目的物が不動産の場合には、留置権者が目的物を占有していても、他の債権者はそれを差し押さえ、競売手続きを進行させることが出来ますが、その手続きにおいてその目的不動産を買い受けたものは、留置権の被担保債権のを弁済しなければなりません。(民事執行法59条4項、188条)、その結果、事実上は、最先順位の優先弁済を受けることが出来ます。ヘー

債務者が破産した場合は、民法に基ずく留置権の効力は消滅してしまいます。(破産法66条3項) 破産宣告をされると、破産債務者の財産の決済手続きに変わり、原則的に債務者の財産すべてが処分され、留置権者には事実上の優先弁済権は無くなります。
ただし、民事留置権に対し商法に基づく留置権は、破産手続き内において優先弁済権へと転化するとされます。(破産法66条1項、2項)ヘー